彼女の家から追い出されて、平手打ちを受けて、それでも特に変わらず二人の関係は続く。
「お母さん、その後どう?」
「恋愛とか、お母さんには理解できないから。」
「そうなんだ。」
親の心子知らずというか、あの日のことを特別意識せずいつも通り、なにもなかったように。
通う高校も違うためか絶妙な距離感があって、やきもちとか嫉妬という感情ともほぼほぼ無縁に過ごし、心地よい関係のままお互いの進路が決まり卒業を迎えた。
あいつは地元に残り、彼女は東京へ。
それでも泣いたりとか寂しいとかということもない。
じゃあまたね、お互い頑張ろう、みたいにあっさりしてた。
そして春。
彼女とは電話やメールで近況を伝え合う、変わらない毎日。
そんな折、中学時代からの親友に誘われた。
「占い行こうぜ。」
浪人して落ち込んでて、彼女ともうまくいってないらしい。
最近できた占い屋さんがものすごくあたると聞いたと。
占いなんてものは全くもって興味ないけど、友の頼みだし暇も持て余してるし、行くことにした。
「何を占いましょうか。」
若い女性の占い師と付き添い感100%のあいつ。
「うーん…今後の人間関係とか彼女とのこと〜かな、お願いします。」
特に占ってほしいことなんてないから、それっぽい?ことを頼んでみた。
隣で鼻息荒くして占い師の言うことを一喜一憂して聞く友。
いいね〜、俺も前のめりになりたいな、なんて斜に構えてた。
そして順番が来た。
「あいつさんね〜…うんうん。人間関係は問題ない、悪い人も周りにいなそうですし、頼れる人が多くていいですね。」ニコ
「彼女さんはね〜…あー、彼女、今好きな人ができたみたい…あなた以外に。」
ちょっと待てい。
いやそれ万馬券より低い確率、いちかばちか過ぎ、外したら完全にペテン認定されるって。
俺が浮気してるとかじゃなく、え?彼女が?俺から何が見えたの?
「でもね、彼女も悩んでいるの。新しい出会いで舞い上がってるんじゃないかって。あなたのことも好きなのよ、でも彼女は今ちょっと優柔不断になってるから自分で決められないみたい。二人の関係は、あなた次第ね。」
ちょっと待てい。
リアル、いやかなり、リアル。彼女の友達ですか。偶然でもそのシチュエーション訪れるんかほんまに。
そして夜。
いつものように彼女と近況を電話で伝え合う。
「そうそう、信じられないことに今日占いに行ったんだよね。付き添いのつもりだけどついでに占ってもらってさ。」
「へ〜それでそれで?」
「Tちゃんに好きな人ができたとか言われてさぁ〜。」
「えぇ〜。」
「そんなわけあるか〜いってなってたとこ。」
「…。」
「うん?」
図星でした。
「え、うそ。」
「…ほんと。」
頭の中が真っ白になるとはこれか。
「ごめん。」
「うそ…。」
悲しみから怒りが湧いてきた。
「それじゃどうしたいのさ、ねぇ。」
「…。」
「言葉がないのはこっちだよ…。」
「わたし、決められない。」
「わかった、終わりにしよう。」
「ごめん。」
おしまい。
こんなあっけなく終わるものなのかと、びっくりするくらいあっさりと幕切れ。
でも泣けない、寂しさもあまり感じない。
こんなものかと思いつつ、一緒に占いに行った友人に連絡をする。
「えぇぇ!うそ!!」
「いやほんとそれ。」
「でもなんだよ、占いどおりじゃん。」
言われてハッとした。
「でもね、彼女も悩んでいるの。新しい出会いで舞い上がってるんじゃないかって。あなたのことも好きなのよ、でも彼女は今ちょっと優柔不断になってるから自分で決められないみたい。二人の関係は、あなた次第ね。」
結局、二人の関係を終わらせたの、僕。
おしまい。