たまに思う。じぶん、なーんにも成長していないなぁ、と。
俺は35年くらい生きているらしいんだけど、
ある分野においては全然レベルが上がっていない気がしている。
これでも故郷の村からは遠く離れた場所に暮らしてるんだけど・・・
なんつーか、精神がぬるま湯っつーか、考え方が布の服っつーか、
攻撃力のある言葉に全く興味が持てなくて、
ひのきのぼうでブログもSNSもやってる感じ。
まぁ、俺の目的は平和なのであって、別に魔王がいたところで問題はない。
倒さなくたっていいやろ、別々に暮らすとか、なんか方法があるやろ。
説得できるならそれがいいし、何かを打倒する以外の選択肢を選んでここまで生きてきた。
俺はまだしばらく、ひのきのぼうでいい。
なんか、こう、つかみどころのない言葉ばかりで、人をイラつかせることが多い。
申し訳ないが、これが俺なのだ。
でさ、人並みに成長できていない、っつーのは。
視点を変えれば、自分が成長したくなかったんだろうな、って取ることもできるって思うのね。
自分を変えるのが怖かったんだろーなー、って思う。
恋愛とか、性に関しても、わりと後発組だったし。
それでもね、なんとなく付き合ってた女の子はいたんだ。仲良しグループに。
いちおう、こんな俺にも飲み仲間に入れてくれる友達がいてですね。
その中に初恋と呼べるような、想い人がいたのですよ。
いつもでかい馬の刺繍が入っているラルフローレンのシャツを着ていた、天パ。
実家が開業医のギラギラの金髪の刈り上げファンキー御仁、ボン。
少女漫画で道明寺に「フッ……おもしれーやつ」って言われる系女子、女バス。
明らかに峰不二子しか許されないであろう服を毎回着てくるギャル、神田うの。
俺の初めての彼女、吹奏楽部出身のお団子ぱっつん娘、ハッチ。
そしてむっつり根暗バンドマン・スケベ発光体、イチロー。
この6名のメンバーで集まっては、時に笑い、時に傷つき、他愛もない話をしていた。
屋上でタバコを吸い、ボンの家で酒を飲み交わし、やかましくてボンのオカンに怒られるなどしていた。
まぁ、とにかく、俺は青春の多くの時間をこのメンバーで過ごしたのだった。
女バス「はぁ~・・・誰か私のために甲子園目指してくれないかな~」
ハッチ「夏になるといっつもそれ言うね」
神田うの「ボン~私のためにトラックの前に飛び出してよ~」
ボンボン「僕は・・・死にましぇん・・・!!!」
天パ「俺、実はお忍びで日本に来てるプリンスなんだよね」
女バス「そしたら私が転校初日に曲がり角でぶつかりに行くわ~」
イチロー「じゃぁ俺はじっちゃんの名にかけるよ」
ハッチ「いっちゃん、それは違うと思うよ」
いつも飲みながら、タバコの煙がもくもくの部屋で、このような会話をダラダラしていた。
バカばっかりのメンバー構成ってこともあって、ハッチの聡明さが際立つ布陣であった。
なんつーか、清潔感が違かったよね。他のメンバー生活感しかなかったし。
透明感もすごかった。肌が白くて。いつもバニラとメンソールの匂いがしていた。なんだかすごく透明少女って感じ。
他の女子は・・・うん、なんつーかね、存在感がすごくて。インパクトとか、そーゆーのはあったね。うん。
ちなみにボンと神田うのは付き合ったり別れたり、別れたり付き合ったりして、最終的に別々の人と結婚した。
まぁ、それは俺とハッチにも言えることなんだけど。
天パ「やっぱアイルランド戦がいちばん盛り上がるよな~」
ボンボン「日本人はナショナリズムが足りてないんだよなっ!」
イチロー「心のオフサイドだけはしないようにしたいよね・・・」
ハッチ「いっちゃん、オフサイドのルール知らないでしょ?」
最後にこのメンバーが揃ったのは、たしか20台の半ばごろ。
ハッチが結婚して子どもが産まれたことをキッカケにして集まらなくなったと記憶している。
そのころにはみんな、生活スタイルも違ってきて、話も合わなくなってきてた。
女子たちはみんな結婚とか出産とかの話に夢中で、
男子たちは政治・経済・仕事の話が中心になっていた。
その中で、なんだか自分だけ取り残されたような気分になることが多くなっていた時期だったように思う。
ボンボン「イチローもさぁ・・イラクで起こってる国際問題とか意識してるぅ?」
天パ「そうだぞ、もうさ、人ごとじゃないんだからさ、アメリカに頼りっきりじゃまずいって・・・」
女バス「アメリカの陰謀解き明かしてないでさ、おめぇは彼女の一人でも作れってば」
ボンボン「いやいや・・・このままアメリカに頼り切ってたらさ・・・オゾン層が・・・」
神田うの「オゾン層の前に自分の髪の薄さ気にしろってハゲ」
イチロー「まぁまぁ・・・CO2は減らしていかないとね・・・」
ハッチ「いっちゃんCO2は誰かがなんとかするから、ちゃんと就職しなよ」
天パ「マジさ~この社会情勢の根本的なところって、戦国時代までさかのぼるからね」
ボンボン「ほんとそれな、どっからどこまでが戦国時代かってのは難しい問題だけど」
イチロー「関ヶ原の戦い・・・とか?」
ハッチ「いっちゃん、関ヶ原の戦いって、知ってる?」
イチロー「うんうん・・あーっとね・・けっこう・・もめたみたいだよね・・」
このような感じで、6人の心は徐々に離れていってしまった。
イチローは20代半ばまでふらふらバンドをやっていたこともあって、よくメンバーに怒られていた。
まぁ、そんなこんなも全てみんなの優しさだったのだろう。でも正直、最後の方は居心地が悪かった。
あと、このメンバーで飲むと、解散するころにはボンと神田うのがネチョい感じになって気持ち悪かった。
酒は飲んでもいいけど、飲まれちゃいけないな・・・ってことを学んだ気がする。
いろいろ書いてみたけど、この年齢になって、苦労を経て、大人になった6人で、また集まってみたい。
そんな話をハッチと会うたびにしていたりする。
ハッチとはあるイベントで再会して以来、たまに連絡を取り合うようになった。
緑のタバコを燻らせながら。強いお酒を飲みながら。あきらめたように大人びて笑う。
彼女は今でも、俺の透明少女だ。
PS.レモンティーのみんなはどんな仲間と思春期を過ごしたのかなぁ?